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不妊のこころ(1)こころに刺さる「お子さんは?」

2021年11月11日 | admin-hirayama

 子どもを望んでも授からない不妊のつらさを、本人たちが語ることは容易ではありません。そのため、当事者以外には、「不妊って治療にもお金がかかるんでしょう? 大変よね」程度の認識しかないのが、普通かもしれません。だから、結婚した夫婦が、「お子さんは?」と尋ねられることがよくあるのでしょう。尋ねた人は「今日はいい天気ですね」のように、あいさつ程度のつもりだったかもしれません。

 でも、不妊に悩む人には、言葉が凶器のように心に刺さります。「大げさな、気にしすぎよ」と思った人がいれば、これは初対面の人に「体重は何キロ?」と尋ねるのと同じかそれ以上、ぶしつけに聞こえるのだと、思いを至らせてほしいのです。

 不妊は「心の病気」ではありません。でも、人生が思い描いたように進まず、自分の努力だけでは何ともしがたい状況は、きっと不妊の当事者ではない人が考えるより、ずっと苦しく、打ちのめされる体験なのです。

 不妊に悩む夫婦は年々増え、今や、生まれてくる子どもの14人に1人が、体外受精などの高度な治療によって誕生しています。不妊は誰が経験してもおかしくない、身近な問題なのです。

※本記事は以前読売新聞で連載した「不妊のこころ」を再編集しています。