お知らせ・ブログ

不妊によるカップルの温度差を乗り越えるために (2)「どうして俺も検査しなくちゃいけないんだ」

2021年11月25日 | admin-hirayama

男性の不満② 「どうして俺も検査しなくちゃいけないんだよ」

不妊を疑い始めるのは一般的には女性が多いでしょう。女性には毎月の月経周期があるために、「妊娠しない」ことを毎月確認させられるわけですから、妊娠を望んでいて性交をしているならば、妊娠していないことに不安を感じるのは当然です。でも男性は「そのうちできるはず」と気楽に考えている場合も多く、医療機関を受診することには抵抗があることも珍しくありません。また、性交ができていれば妊孕性(妊娠する/させる能力のことです)に疑いを持たないのが男性の通常の反応なので、女性側に問題がある可能性が高いのではないか、妻が心配なら妻だけまず検査を受けて安心できればそれでいいだろうと考えるかもしれませんね。

男性にも知っておいてほしいのは、現在では、不妊カップルの約半数に男性側にも不妊原因が見られるという事実です。もちろん、不妊外来は婦人科にあることが多いので、男性にとっては敷居が高いのも確かです。ですからまずは不妊を気にしている女性だけが受診するというのは自然だと感じるかもしれません。でも、不妊治療は最初からカップル二人で取り組むことがとても大切であると理解してほしいのです。それは、女性だけが妊活を始め、後になって男性不妊が判明した時のリスクが大きいこと、それによる夫婦関係の悪化が危惧されるためです。

男性にとって、精液検査への抵抗感があるのも当然です。男性としての価値を判定されるような不安を感じるからです。その不安を軽減するには、まず精液検査からわかることの意味を正しく理解することが大事です。精液検査の結果は「基準値」として数値で示されるので、その値より上か下かがとても気になります。ですが、医療者にとって、「基準値」はその精子が自然に妊娠させる能力を示すものではないのです。基準値以上でも自然妊娠が難しい人もいれば、基準値を下回っている男性の精子でも自然妊娠していることも珍しくありません。また、精液の状態はその時々でかなり変動するので、一度の検査結果がその人の精巣の機能を正確に示しているとは限りません。さらに、男性が誤解しがちなこととして、精液検査の結果と“性的能力”を混同してしまうことも問題です。精液検査の結果「男性不妊」と診断された場合はショックでしょうが、その結果が即子どもが持てないということではありません。精液検査の結果で男性としての自信やプライドが傷ついて苦しい時はカウンセラーに相談をしてみましょう。